イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「あなたたちは――」

言い終える前に、左にいた一番の巨漢が動き、セシルの体を肩に担ぎ上げた。

「きゃあぁ!」

「セシル!!」

追いついてきたルシウスが駆け寄るが、右の男がすかさずローブの中から剣を引き抜き、ルシウスの首もとに突きつける。

「っな!? ……貴様らっ!?」

憤り叫ぶルシウス。けれど、剣を持たない彼には為す術がない。
剣と対峙している間に、残りのふたりがセシルを抱えて暗闇へと姿を消す。

剣を突きつけてきた男も、時間稼ぎを終えるとあとを追うように走り去っていった。

「待て!! セシル!!」

ルシウスは暗い宮廷の中、男たちの逃げていった方向へ彷徨い走る。
けれど拐われたセシルを見つけることはできず、静まり返った廊下に、ルシウスはひとり取り残された。
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