ブザービーターは君のため

1.遠くなる意識

　何かが背中に当たった衝撃に振り向くと栗色の髪がそこにあった。

「痛っ。
　ごめん……えっ。デカっ。」

　栗毛の主が見上げた瞳と、自分が見下ろした視線がぶつかった。
　その瞳はクリクリと大きな目がこぼれ落ちそうな程に見開いていた。


「……チビ。」

　これはなんの記憶だ。

「キャ！今の！！
　いいな。ちーちゃん。
　一番のスター選手だよ。澤村選手。」

「えー。チビって言われたよ。」

「うそ！澤村選手の声聞いたの！？
　超レアだよ！！！」


　あぁ……。
　胸クソ悪くて吐き気がする。

　青ざめていく顔は血の気が引いていくのが分かる。

　だから嫌なんだ。

「ねぇ。私、そんなにチビじゃないけど？
　大丈夫？ちょっと！？」

　頬に触れた手が思いのほか心地よくて、そこからの記憶は無くなっていた。