過保護なドクターととろ甘同居
Chapter2
「お疲れ様でしたー」
午後八時。
夕方からのシフトのバイト仲間に声を掛け、お店をあとにする。
更衣室に入りエプロンを取りながら、つい深いため息が出てしまっていた。
あの妊娠騒動の一件から、俊くんは二人で住む部屋に居着かなくなった。
たまに戻ってきては、着替えを持ち出し、洗濯かごには大量の衣類が放り込まれている。
私が不在の時に帰ってきているのは、状況的に明らかだった。
そして数日前、俊くんと久しぶりに顔を合わせた。
次に会った時は、きっと私たちの終わる時。
私がそう感じていたのと疎通して、俊くんも同じ気持ちだった。
これから、どうしようか。
俊くんとの別れを悲しむより、不思議なことに今後の自分の生活を心配する気持ちの方が遥かに優っている。
現実問題、今の部屋を引き払えば、新しい住まいを確保しなくてはならない。
それには、敷金礼金など少し大きなお金が必要となってくる。
俊くんとの共同生活で、私に貯金をしていく余裕は今まであまりなかった。
だから、新生活を安心して迎えられるのか、不安は募るばかりだ。