過保護なドクターととろ甘同居


出てきた“破水”なんてフレーズに、つい驚きのリアクションを取ってしまう。

産婦人科の受付けらしからぬ態度に、心の中で『まずいまずい』と独り言を呟く。


「少し前から、ちょっと生理痛みたいな痛みもあって……」

「わかりました。お掛けになって少々お待ちください」


産婦人科に働き始めてから、暇を見つけては専門書を読むようになった。

受付けに座るだけといえ、産婦人科にはどんな人が訪れるのか、妊娠中の人の体のことや、婦人科にかかる人の主な病気など、知らないよりは少しでも知っておいた方がいい。

病院の最初の窓口として、まず初めに患者さんとコンタクトを取るのが私なのだから、完全に無知では患者さんにも不安を与えてしまうと思った。


受付けから診察室に向かうと、先生はデスクにつきパソコンモニターを見つめていた。

木之本さんが患者さんを奥のベッドへと誘導している。

これから胎児の心音を聞いたり、超音波で姿を見たりするところのようだ。


「先生、すみません。妊婦健診でいらした鈴木さんなんですが、今朝トイレに行かれた時に何か出た気がするとおっしゃってて、破水ではないですかって。生理痛のような痛みもあるそうです」

< 54 / 144 >

この作品をシェア

pagetop