過保護なドクターととろ甘同居
出てきた“破水”なんてフレーズに、つい驚きのリアクションを取ってしまう。
産婦人科の受付けらしからぬ態度に、心の中で『まずいまずい』と独り言を呟く。
「少し前から、ちょっと生理痛みたいな痛みもあって……」
「わかりました。お掛けになって少々お待ちください」
産婦人科に働き始めてから、暇を見つけては専門書を読むようになった。
受付けに座るだけといえ、産婦人科にはどんな人が訪れるのか、妊娠中の人の体のことや、婦人科にかかる人の主な病気など、知らないよりは少しでも知っておいた方がいい。
病院の最初の窓口として、まず初めに患者さんとコンタクトを取るのが私なのだから、完全に無知では患者さんにも不安を与えてしまうと思った。
受付けから診察室に向かうと、先生はデスクにつきパソコンモニターを見つめていた。
木之本さんが患者さんを奥のベッドへと誘導している。
これから胎児の心音を聞いたり、超音波で姿を見たりするところのようだ。
「先生、すみません。妊婦健診でいらした鈴木さんなんですが、今朝トイレに行かれた時に何か出た気がするとおっしゃってて、破水ではないですかって。生理痛のような痛みもあるそうです」