過保護なドクターととろ甘同居


「あっ、すみません」


覗いていたことに、反射的に謝っていた。

お休みのところ邪魔しては悪い。


「起きてたのか」

「あ、はい。でも、そろそろ寝ようかと」


『おやすみなさい』と声を掛けて立ち去ろうとした時、先生が手招きをした。

先生のプライベートな時間にお邪魔してもいいものかと若干の戸惑いを抱いたまま、リビングへと足を踏み入れる。

そろそろと先生の掛ける奥のソファーまで近付いて、ローテーブルの上にあったものを思わず凝視してしまった。


「飲まれていたんですね……」


宮城さんがいつだか言っていた。

先生は滅多にお酒も飲めない、と。

その日の診療が終わっても、産後入院をしている患者さんなどの診察が時間を問わず入ることが多く、深夜でも白衣を着なくてはいけないことがあるから、お酒も飲めないと聞いていた。


「久しぶりにな。今日は出番も無さそうだし、宮城さんが夜勤で出てるから」


現在、入院している患者さんは確か二名ほど。

どちらも安産で母子ともに健康な患者さんだと聞いている。

こういうタイミングでしか、先生は余暇をゆっくり過ごせないとなると、産科医は本当に気の休まらない仕事だと思う。

< 66 / 144 >

この作品をシェア

pagetop