過保護なドクターととろ甘同居


ベッドに腰掛けぼんやりしていると、部屋の扉がノックされる。

先生が訪れたことで、昼間約束していたことを思い出した。

いそいそとドアへと向かい部屋を開けると、大きな紙袋を手にした先生が待っていた。

無言でその紙袋を差し出される。


「あの、これは……」


渡されて改めてよく見てみると、紙袋には有名アパレルショップの名が印字されていた。

でも、雑誌なんかで見かける程度で、私には無縁のブランド。

高額なお店と認知しているし、買ったことはもちろん、お店に入ったことすらない。


「休みを返上させてしまったお詫びの品、ということで受け取っておいてほしい」

「えっ、そんな、今日は私も色々勉強させてもらったと思ってますし、こんな――」

「元々渡そうと用意していたんだ。今日はこれを着て出掛けてほしい」


そんな風に言われてしまって、遠慮することが逆に悪くなってしまう。

手にした紙袋に戸惑いの視線を落としている私に、先生はいつものように頭をそっと撫でてくる。


「十八時に予約をしている。用意ができたら呼びにきてほしい」


そう言い残し、先生は部屋の前から立ち去っていった。

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