クールな王太子の新妻への溺愛誓約
華麗なる氷の王太子


それは息を飲むフラスコ画だった。

聖人を囲み、たくさんの人々が光を求めて手を伸ばしている。五人の大人が両腕をめいっぱい伸ばしてもまだ足らないくらい大きな絵は、金色に光り輝く王座のうしろで圧倒的存在感を放っていた。

見上げてみれば、そこには天国を描いたと思われる天井画。何人もの天使が、天国へ召された人を光の中で祝福している。

マリアンヌはそれらを見て、大国の謁見の間とはこれほどまでに神々しいものなのかと驚愕した。マリアンヌの自国【ピエトーネ】の王宮の比ではない。

あまりにも呆気にとられた顔をしていたせいだろう。隣に控えていた両親から、「マリアンヌ」と彼女を制する声が控えめにかけられた。
そこで我に返った彼女は、慌てて表情を引きしめる。


「ピエトーネより参りました、マリアンヌ・アルバーニ・ファロンです。国王陛下におかれましては、拝謁の機会を賜りまして恐悦至極に存じます」


わずかに声を上ずらせながら、マリアンヌはドレスを摘まんで静かに膝を曲げた。
腰まであるブロンドの美しい髪が肩先で揺れる。色白の頬は、緊張のため気色ばんでいた。猫のように大きく愛くるしい目を瞬かせ、マリアンヌは艶のある薄紅色の唇を引き締める。

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