クールな王太子の新妻への溺愛誓約
秘密が暴かれるとき


「この頃レオン殿下の様子が変わったと、王宮内で噂になっているそうです」


ベティがそんなことを言ったのは、朝食からマリアンヌの自室へ戻ってきた時のことだった。食後の紅茶を淹れる準備をしながら、侍女たちの話をし始める。


「ナイフのように鋭かった面差しが柔らかくなったと言う者や、口調まで優しくなったと言う者がおります」


ベティがティーポットにお湯を注ぐと、部屋中にいい香りが広がる。


「マリアンヌ様が来られたおかげだと、みな言っておりましたよ」

「そうかしら。そうだといいのだけど」


マリアンヌはニコニコしながらベティからカップを受け取った。

レオンに街の土産を届けてから十日が経っていた。あの日以降、食事を一緒にとってくれるようになり、少しずつではあるが確実にレオンとの距離は縮まっている。
ごくたまに笑顔も見せてくれるようになった。氷のように冷ややかな印象は、確かになくなったとは思う。

ふと、部屋の一角に置かれた花瓶に目が留まる。

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