「………なんだ? これ」


何度も辺りを見回していた修司は、そこに有る筈の物が無くなってしまった事に漸く納得して、しかし思わず呟いた。


ちょうど夕方の帰宅時間。空はあけ色に暮れなずみ、帰途に就く人達が気忙しく行き交っている。


そんな中、ビルを見上げながら惚けたように佇む修司を気にもせず、ただ冷ややかに通り過ぎていく人の流れ。


修司とその足元に長く伸びた影は、まるで時が止まったかのように、暫く微動だにも出来ないでいた。