昼下がりの情事(よしなしごと)

おもむろに志郎が、仕事で使っている吉田カバンのブリーフケースから、封筒を取り出し、

「……今日、わざわざ、きみにここまで来てもらったのは……」

テーブルの上に置いた。

「君から、これを、美咲に渡してもらいたいと思ってね」

封がされてなかったので、魚住が目で、中を拝見しても?と問うと、志郎が肯いたので、魚住が中を(あらた)める。


……離婚届だった。

夫の欄だけ、すでに記入してあった。

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