ライアーピース
Piece4




高校生活もだんだんと慣れて来て、
私は楽しい毎日を送っていた。


相変わらず陸は。
毎日のように私を忘れてしまう。


それどころか、
高校に入学したのだって
忘れているもんだから、


毎朝迎えに行っては
記憶の整理を一緒にすることが
日課となっていた。


忘れていたということを自覚しているためか、
陸は思い出した後、
いつも申し訳なさそうな、
辛そうな、そんな顔を向ける。


それが苦しくて、哀しくて。


それでも私は陸に笑ってみせる。


そうすると陸も笑ってくれるから。


「若葉、次の休みさ、どこ行きたい?」


「休みの日?んー、どこでもいいかな」


「なんだよ、その投げやりみたいな言い方」


「あ、ちが・・・っ
 そんなんじゃなくて・・・あの・・・」


違うの。そんなんじゃないの。


ただ、陸とならどこにいても
何をしてても楽しいし嬉しいって意味なのに。


どうしてこう、いつも一言足りないんだろう。


「えっと、えっと・・・さ、散歩は?」


「散歩?一日?」


「だめ?」


「いいけど」


陸が私の手を握る。


大きいと思っていた私の手は、
陸の手と比べるととても小さい。



いくら男勝りだからって言っても、
これが男の子との差。


陸の手はいつでもあったかい。
だから触れると嬉しくなる。


守られてるって感じるの。


まあ、私はそんなのには慣れていないんだけど。


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