ライアーピース
Piece2




あの時、どうして
あんな嘘なんかついたんだろう。


陸の記憶がないことをいいことに、
陸を騙したことになる。


陸は最初こそ
怪訝そうな顔をしていたけれど、
私の嘘を受け入れた。


詳しく病気のことを聴くと、
どうやら陸は記憶が一日しか持たないらしい。


両親が事故で亡くなり、
病気のおばあちゃんと二人暮らしをしていることと、


日常生活のことを覚えている陸は
生活には支障がないって
言ってはいたけれど、


やっぱり学校のことや
友達のことは思い出せないんだって。


私は陸に、幼い頃の話をした。


「それでね、その時私、
 “陸のお嫁さんになる”とか言い出したりして」


「へえ、お嫁さんね。
 だから俺たち、付き合ってるんだ?」




陸に嘘のことを触れられると、少し胸が痛んだ。


私は、彼氏なんかいたことない。


告白したりされたりなんかもない。


だけど目の前にいる陸は、私の話を信じてる。


私が、陸の彼女なんだと認識している。


最初の1か月こそ、陸は毎日のように忘れ、
毎日のように私は“嘘”をついた。


そうして、うまくやってきた。


気付けばもう、冬休み間近。


受験シーズン真っ只中の私たちにとって、
人生最初の分岐点が迫っていた。





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