ライアーピース
Piece9



朝、起きて
鏡の中に映る自分を見つめる。


ぼーっとする頭を
フル回転させて私は考えた。


今日、陸に会ったら
普通にしよう。


まるで何事もなかったかのように振る舞おう。


陸だって、私にキスしたことは忘れているんだから、
私が気にしなければいい話。


「行ってきまーす」


私が玄関先で靴を履いていると、
リビングからお母さんが顔を出した。


「なあに、若葉~。
最近恋でもした?」


「な、なんでっ・・・?」


「隠さなくたって、
お母さんにはわかるんだから~」


「うるさいなあ!
恋なんかしてないってば!!」


「・・・陸くんと何かあった?」


「え・・・」


「ほら、図星。何があったの?
こんな朝早くに出かけるなんて。
まだ1時間も早いじゃない」


時計を見ると確かにそうだ。


まだ学校へ行く時間帯じゃない。


私は観念してため息をつくと、
お母さんの方へ向き直った。


「陸ね・・・」


私はお母さんに全てを話した。


陸の病気のこと、私のついた嘘のこと、
唯と陸のこと、陸にキスされたこと。


話しているうちに涙が込み上げてきたけれど、
必死で堪えた。


お母さんは口を挟むでもなく、
ただ私の話に頷くだけだった。


一通り話し終えると、お母さんはクスッと笑った。


「やっぱり、陸くんに恋をしていたのね」


「恋って・・・言うのかな」


「言うでしょう。
昨日一晩中泣いていたのがその証よ」




バレていたのか・・・。


一応隠れて泣いたつもりだったのに。


お母さんは私の背中をさすって、そっと呟いた。


「お母さんは、その嘘、素敵だと思うな」


「えっ?」




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