ライアーピース
Piece10



楽しかったはずの遊園地が、
最悪な形で終わってしまった。


帰る頃にはもう、
夢の国ではなくなっていたの。


お互い何も話さずに帰り道を歩く。


行きよりも帰り道は
陸との距離が出来たような気がした。


私の家へたどり着いて、
私が何も言わずに玄関へ向かおうとすると、
陸の手が私の腕を掴んだ。


「陸・・・」


「・・・・・」



何も言わずに手に力を込める陸。


それは優しいんだけど、痛いくらいに思えた。


ぎゅっと力強く掴む陸の手を、
私はどうしても払いのけられなかった。


「陸、離して」


「二宮は・・・」


陸がそう呟いた。


「二宮は俺のこと、好き?」


「えっ」



「さっき、観覧車で言ってたろ。
 唯よりも好きなのにって」



ああ、そう言えばそんなことを言ったっけ。
あの時の私は随分と感情任せで


正直何を喋ったのか覚えていなかった。



それを陸は、帰り道の間
ずっと考えていたんだろうか。



「あれって、本当?」


「何、今更・・・」


「ちゃんと答えてくれ」


「なんでそんなこと・・・」



どうしてそんなこと聞くのよ。
分かってるじゃない。


私が陸を好きだって言っても、
唯には敵わないんだから。






「若葉」




陸の声がさっきよりも強く聞こえた。


耳に響く、私の名前。


私はその声を聞いて泣きそうになった。



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