オトナの恋は礼儀知らず
8.真相を解明したい
あれ以来、バーに来れずにいた。
居心地のいいお気に入りの場所をみすみす失うのは自分の心情に反するけれど、また桜川さんと会って騒動に巻き込まれたくなかった。
もちろんあれ以来、図書館のあの分館にもいっていない。
それでもどうしてあぁなったのか少しでも真相を知りたかった。
バーの常連だった友恵を見知らぬ人に連れ帰させるようなマスターではない。
ずいぶん経ってから次の日が休みの深夜にバーに行くことにした。
上手く行けば居心地のいい場所を奪還できるかもしれない。
美容院は火曜休み。たまに月、火。
図書館は月曜休みだ。
月曜の深夜に行けば、次の日が仕事の桜川さんはバーに来ていたとしても帰っているはず。
意を決してバーのドアを押した。
「いらっしゃいませ。
友恵さん。お久しぶりですね。」
カウンターから声をかけてくれたマスターの近くに座った。
いつ見ても惚れ惚れする手つきで綺麗なカクテルを作っている。
シャンパングラスに注がれたカクテルは真ん中の漆黒にわかれて下に行くほど透き通る鼈甲色が鮮やかで、漆黒の上は真っ白な雲みたいな泡があった。
「これ。私からです。」
見惚れていたカクテルは友恵の前に置かれた。
「いいんですか?ありがとう。
綺麗。
なんだか大人っぽいカクテルですね。」
50代後半らしいマスターは謎が多い人だ。
年齢を感じさせない格好良さは異性だけれど自分の目標でもある。
謎の人でも信用しているのはマスターの人柄が滲み出てるから。
絡むような人からはさりげなく守ってくれる。
それは誰に対してもで、常連客なら尚更。
「ブラックベルベットです。
大人の色気がある艶やかな女性に似合うカクテルです。」
嫌味なく言えるのはマスターだからこそ。
いい気分で酔わせてくれて、ついつい居座って時間を忘れてしまう。
「マスター。
前回、来た時のこと覚えてる?」
「えぇ。上機嫌で酔われていましたね。」
聞きたいのに言葉に詰まる。
どうして桜川さんと帰したのかと訴えるのは言いがかりじゃないだろうか。
「私がどうやって帰ったのか覚えてます?」
桜川さんのことを知っていて、いい人ですし離婚して今は独身ですからとか……。
マスターのことだから既婚者と知っていたら一緒に帰したりしないはず。
居心地のいいお気に入りの場所をみすみす失うのは自分の心情に反するけれど、また桜川さんと会って騒動に巻き込まれたくなかった。
もちろんあれ以来、図書館のあの分館にもいっていない。
それでもどうしてあぁなったのか少しでも真相を知りたかった。
バーの常連だった友恵を見知らぬ人に連れ帰させるようなマスターではない。
ずいぶん経ってから次の日が休みの深夜にバーに行くことにした。
上手く行けば居心地のいい場所を奪還できるかもしれない。
美容院は火曜休み。たまに月、火。
図書館は月曜休みだ。
月曜の深夜に行けば、次の日が仕事の桜川さんはバーに来ていたとしても帰っているはず。
意を決してバーのドアを押した。
「いらっしゃいませ。
友恵さん。お久しぶりですね。」
カウンターから声をかけてくれたマスターの近くに座った。
いつ見ても惚れ惚れする手つきで綺麗なカクテルを作っている。
シャンパングラスに注がれたカクテルは真ん中の漆黒にわかれて下に行くほど透き通る鼈甲色が鮮やかで、漆黒の上は真っ白な雲みたいな泡があった。
「これ。私からです。」
見惚れていたカクテルは友恵の前に置かれた。
「いいんですか?ありがとう。
綺麗。
なんだか大人っぽいカクテルですね。」
50代後半らしいマスターは謎が多い人だ。
年齢を感じさせない格好良さは異性だけれど自分の目標でもある。
謎の人でも信用しているのはマスターの人柄が滲み出てるから。
絡むような人からはさりげなく守ってくれる。
それは誰に対してもで、常連客なら尚更。
「ブラックベルベットです。
大人の色気がある艶やかな女性に似合うカクテルです。」
嫌味なく言えるのはマスターだからこそ。
いい気分で酔わせてくれて、ついつい居座って時間を忘れてしまう。
「マスター。
前回、来た時のこと覚えてる?」
「えぇ。上機嫌で酔われていましたね。」
聞きたいのに言葉に詰まる。
どうして桜川さんと帰したのかと訴えるのは言いがかりじゃないだろうか。
「私がどうやって帰ったのか覚えてます?」
桜川さんのことを知っていて、いい人ですし離婚して今は独身ですからとか……。
マスターのことだから既婚者と知っていたら一緒に帰したりしないはず。