恋愛ノスタルジー
聖なる夜の涙
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やはり圭吾さんは、主治医となった宮本先生から最低でも三日間の入院を宣告された。

そんな状態なのに圭吾さんときたらおとなしくしていたのは精密検査のわずかな時間だけ。

「黒須、俺の入院は他言無用だ」

「心得ております」

翌日病院に来た黒須さんにこう言うと、圭吾さんはその日から病室をオフィスにしてしまった。

「……何か言ってください、彩様。先生をはじめ、看護士の皆様も非常に……」

「……無理です」

私に圭吾さんを止める力なんてあるはずない。

「ですがあなたは婚約者。愛するあなたに言われたらきっと社長も……」

前にも思ったけど……本当に黒須さんは圭吾さんの秘書なんだろうか。

圭吾さんが私を好きじゃないとか、花怜さんという恋人がいるとか知らないのかな。

そりゃあ圭吾さんがビジネスとプライベートをしっかり分けてるなら気付かないかも知れないけど、会社に花怜さんが訪ねてきて一緒にランチとか、夕方なら仕事帰りにデートとか、スケジュール組む時に少しくらい絡みがあったりとかしないのだろうか。

「さあ、早く言ってください」
 
名ばかりなんです。とはさすがに言えず、私は冷や汗の出る思いで黒須さんから圭吾さんに視線を移した。

圭吾さんはそんな私に気付く様子もなくベッドに引き寄せたテーブルにノートパソコンと書類を広げ、それに視線を落としたまま携帯で何やら話し込んでいる。

外は生憎曇りで、開け放たれたカーテンからはビルと灰色の空しか見えない。
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