恋愛ノスタルジー
真実
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「馬鹿なんじゃないの、アンタもアンタの婚約者も!」

美月が両目をわざと細めてチッと舌打ちした。

……やっぱりそうだ、そうなんだ。

「それ、成瀬さんにも言われたぁ。ううっ、ヒック……!」

「泣くなっ!うっとーしい!」

「だ、だって……」

ふたりの職場の中間地点にある馴染みの居酒屋で、私はグズグズと鼻をすすった。

クリスマスも過ぎ去った今日が、美月も私も今年最後の出勤日だった。

「アンタにはプライドがないの!?やっと好きって気付いた相手の恋人のネックレスなんぞ選びやがって!これだから温室育ちのお嬢はイライラすんのよ。もしも私がアンタと面識なくて立花とかいう性悪女だったら胸ぐら掴むどころか、サッサと身ぐるみ剥がしてデッサン始まる一時間前から台の上に立たしとるわっ!」

「っ……!」

あまりの毒舌マシンガンに、決壊したダムのようだった眼から涙がピタリと止まった。

賑わっている店内は、美月の荒げた声もなんなく吸収し、店の活気へと変化させてしまっている。

あちこちで灯る透き通ったオレンジの光は、友にガミガミと叱られ続ける私をいつも通りに照らしていた。

少し涙が引っ込んだ私をチラ見した後、美月はビールのジョッキを豪快に煽り、眉間にシワを寄せたまま続けた。

「伝えないの?やっと好きって気付いたんでしょ?」
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