恋愛ノスタルジー
悲しいキス
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「ほーお。で、その画材道具の会社社長にして天才イケメン画家の家政婦やってんだ。天下の峯岸グループの御令嬢のアンタが」

「もう!美月ったら!『の』が多すぎるし悪意がある!」

尊さんのイタリアンレストラン《ブリッラーレ》のオープンパーティから数日後の今日、私は美月と二人きりの女子会を開いていた。

場所は、美月の勤めるアパレル会社付近の和風居酒屋。

橙色の灯りが和む、私たちの行き付けの店だ。

「それにしても不倫を推奨する旦那ってどうよ。狂ってるとしか言いようがないわ。金持ちって変!」

「だって……私も圭吾さんもお互いを好きじゃないんだもの」

店内の客はまだまばらで、話の内容が内容だけに自然と声が小さくなる。

美月は私の言葉にわざと眼を細めると、鶏皮の串をグイッと真横に引いた。

「で、なに。今日はイケメン画家のところに行かなくていいわけ?」

「今晩は会食があるんだって。昨日、掃除と洗濯をしたのでやることないんでーす」

会えないという残念な気持ちを隠しきれず、私はジョッキを握り直して溜め息をついた。

「ふうん……」

「……なに」

あと一口残っていたビールを飲み干した美月が、ジッと私を見つめる。

「私は彩の三ヶ月を応援するよ?でもさ、圭吾さんとはどうなのよ。相変わらず冷たいの?麗しの婚約者様は」

そうだ。まだインテリア雑貨搬入の件を話してなかった。
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