エリート医師のイジワルな溺甘療法
主治医と幸せになる方法


まだ目が覚めきらぬまどろみの中で、微かに感じる朝の気配。

横たわっているベッドから少しの違和感を覚えて、だんだん意識がはっきりし始める。

素肌にシーツがあたる感覚と、いつもと寝心地が違うベッド。わずかな振動が体に伝わってきて、幸せな気持ちが胸にじんわりと広がっていった。

そうだった、私は昨夜──。

このわずかな揺れは、ひとりでいれば決して感じないもので、誰かが一緒にいて身じろぎをしている証拠。

その存在を確かめたくて、ほんのちょっと手を動かすと、すぐにぬくもりに触れられた。

このちょっぴり固めな感触のぬくもりは、私の恋人……安西雄介のもの。

あたたかくて逞しい腕に体を寄せていくと、ぎゅっと抱き寄せられて、幸福感に満たされる。

よかった……昨夜のことは、夢じゃないんだ。好きだと言われたことも、この体に何度も情熱を与えられたことも。


「おはよう、穂乃花」


耳元で聞く起き抜けの彼の声は、ちょっと掠れていて、夜の甘い声とは違う艶っぽさがある。


「おはよう……雄介さん」


名前を呼ぶのもまだ気恥ずかしい。私も彼も一糸纏わぬ姿だと思えば、少しの照れを覚えて、彼のオンナになれたうれしさを実感する。

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