冷徹社長の容赦ないご愛執
 社長がわざわざ私を待ってくれていたことだけでも心拍が乱れていてしょうがないのに、さらに食事に連れて行ってくれるなんて、こんな好待遇に目を回さないわけがない。


「で、でも……」

「叔父さんの許可はもらっている」

「そ、そうではなくて、社長は……」

「ああ、酒くらいならまだ飲めるから気にするな」


 断る理由はなくったって、いくらでも作れるそれをさりげなく伝えてみたけれど、見事にかわす社長の長い脚は颯爽と店の出口へと歩いて行ってしまう。

 「ありがとうございました」と店内からの声に振り向き「ごちそうさまでした」と返す社長。

 そこに続き「お疲れさまです」と頭を下げると、カウンターの中の叔父が、にいっと白い歯を見せていやらし気に笑ったのには、いぶかしく眉間を寄せてしまった。




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