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 旅館の地下にある食事処は個室になっていて、周りを気にすることなくゆっくりと食事が楽しめる。

 地下と言っても、元々丘の上に造られた旅館の一階より下は、窓から海が見渡せるような部屋だ。

 暖色の明かりの窓の外には、真ん丸の月が海の上にぽっかりと浮かび、揺れる水面に美しい光を落としていた。

 お座敷のテーブルを挟んで座る社長は、会席料理のお刺身に口元をほころばせ、気分よさげに日本酒をあおる。


「あの支配人、お前の元カレか?」

「え!? ま、まさか! 違いますよ!」


 やっぱりお酒が入ると口数が増える社長は、大和と私の間柄をからかうように問いかけた。


「だとしたら、彼のほうが一方的に想いを寄せていたってとこか。いや、あるいは現在進行形かもしれないな」


 社長は独り言のように呟き、綺麗な箸使いで料理を口にする。


「それはないですよ。彼は妹と結婚してるんですから」


 ありえない仮定の話に笑いがこぼれる。

 確かに、大和が私に対して過剰に保護者面することはしばしばあったと思うけど、あくまで身内としての顔だ。

 そんな素振りなんて今まで見たこともない。