冷徹社長の容赦ないご愛執
 寂しいと思ってるんだったら慰めてあげてもいいかなと思ったのに。

 それだけの悪態を吐けるくらい元気なんだったら、私が一緒にいる必要はないんじゃないかと呆れる。

 むくれて「帰ります」という私に、社長はおかしそうに笑いながら「悪い悪い」と悪びれずに軽く謝ってくる。


「冗談だよ、そんな怒るなって」


 申し訳なさそうにしながらも、社長はなんだか楽しげだ。

 上目使いに軽く睨み上げていた私に、臆することのない穏やかさ。

 余裕のある大人を前に、頬の熱さは抜けない。


「……少しくらいなら、いいですけど」


 私とのやり取りを楽しく感じてくれているんだったら、もう少し一緒にいてあげてもいいか。

 渋々といった空気をあえて醸したけれど、本当は、最初から断るつもりなんてなかった。

 社長といられる時間が増えることに、胸が浮かれているのに気づいていたから。

 だけどそれは、まだお酒が残っているからなんだろうということのせいにして、ときめく胸の理由を深くは考えなかった。
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