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 翌日の午後。

 二十二階で行われた人事部会を終え、上階へと向かうエレベーターの中で、本来なら私が立つべき操作パネルの前に陣取る社長が、後ろに控える私に肩越しに振り向いてきた。


『初心を思い出せるなら、またこっちに呼び戻すさ』

『え?』

『もしこの処遇が不服なら、退職を申し出るか、あるいはまた一から奮起してくれるか。
 あの狸の一番の見せ場は、内示を出してからだな』


 切れ長の瞳に捉えられどきっとしたのは、あまりに美麗な顔がつむぐ流暢な英語に聞き惚れていたわけではなく、浅田室長のことに関して、頭ごなしに左遷を言いつけたわけではない社長の思慮が見せられたからだ。

 さきほど社長は、浅田室長の異動先を福岡支社に、との指示を出した。

 各営業部の最上位には統括本部長がおり、社長が指示した福岡支社の営業部長となると、浅田室長は実質、足を使って営業する一般社員と同等の扱いになる。