冷徹社長の容赦ないご愛執
『こういうことは、ずっとやってたのか』

『はい。こういうことでしか叔父への恩返しができないので』


 英語で交わす会話は、たぶん誰にも内容を知られていないと思う。

 社長は切れ長の瞳で真っ直ぐに私を射貫いてきた。

 奥に鋭さを秘めた眼光に、圧を感じる。

 だけど、そう感じたのも一瞬のことで、社長は手元に視線を落とすと、長い指でお猪口をつまみ、口の端をゆるりと上げる形のいい唇に熱いお酒を運ぶ。

 なにか言いたげに見えたのは気のせいだったかと思っていると、少しだけとろみを見せた瞳にまた囚われた。


『日本舞踊、美しかったよ。また、見せてもらいたい』


 切れ長の瞳のその奥に、かすかに恍惚な揺らめきを見る。

 あのつたない舞いを思い出してくれているんだろうか。

 今までたくさんお客様にそういう言葉をもらってきたけれど、その中でも一番の褒め言葉に聞こえたのは、なぜなんだろう。



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