溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「あれ? そういえばおばちゃん髪形変えた?」
お決まりのカウンター席に座り正面にいるおばちゃんを見上げると、いつも白髪交じりのショートカットが、今日は綺麗にセットされていて黒々としている。10歳くらい若くなったようにも見えた。
「そうなの、わかる? 今朝美容室に行ってきたの」
「すごく似合ってますよ!」
「本当? よかったぁ。実は今度息子が温泉旅行にでも行かないかって誘ってくれて。少しでも若々しい姿でいなくちゃ息子にも恥ずかしい思いさせるんじゃないかって思って、奮発しちゃった!」
そう話すおばちゃんは本当に嬉しそうで、こっちまで顔が緩んでしまうくらい。確か息子さんは遠方に住んでいて私とあまり年齢が変わらないと言っていたっけ。
いつも一人でお店を切り盛りして、どんなときも休まず働いているおばちゃんにはゆっくり楽しんでもらいたい。