溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


そんな俺の心内をどこまで理解しているのか、西沢はマスコット片手にきゃっきゃと朱音と楽しげに盛り上がっている。

最近少し吹っ切れたような雰囲気がある西沢。そしてなにより自信が付いたように見えた。新しいアイデアをバンバン提案してくるし、仕事にも熱が入っている。

少し前までは私なんか、と卑下することが多かったあいつが少し変わったのは、お盆に帰省したからだろう。

そう思うと嫌がるあいつを連れて行ってよかった。西沢の中で確実になにかが変わっているのは、単純に俺も嬉しかった。


今年の盆休み、車と船を乗り継ぎあいつの実家に帰った。話に聞いていた通り、あいつの両親はかなり厳格な人たちだった。しかも議員と聞いていた父親は、西沢も知らないうちに島の長になっていた。

威厳と品格を兼ね備えた父親が俺を見て開口一番に、

「職業はもちろん公務員なんだろうな」と言った。

そうじゃなければ許さないとは言わなかったが、目がそう訴えていた。
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