【完】せんぱい、いただきます。
5月  1皿目:先輩とカルボナーラ

なぜ、私はここにいるのだろう。



キッチンの方からふんわりと生クリームとチーズが合わせられ、
それらを熱しているかおりと、ふつふつという音が生まれている。



ここは、大学の先輩、一樹さんの部屋。

水色と白を基調としたカーペットやカーテンやベッドの色、
もうすぐ始まる試合の見所解説をしている32インチテレビの画面、
白っぽい食器棚の中に私には到底理解できないこだわりで並べられたグラス。

この部屋の全てのものたちは、互いに邪魔し合うことなく混ざり合い、
私という異物さえこの部屋の一部にしそうな雰囲気で包み込んでいる。

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