王族の婚姻をなんだと思っていますか!

舞踏会

***


舞踏会当日になった。

「あのぅ。本当に行くのでしょうか」

ウォル殿下の手を借りながら王家の紋章入りの馬車から降り、ひきつった顔をする。

目の前では、門番代わりの近衛兵団の正装姿のふたりが、にこにことこちらを見ていた。

このまま白い大理石の廊下の先を進むと、内宮の大ホール。

たくさんの人のざわめきが聞こえてきそうな気さえする。

そんな私を彼はひょいと覗き込んだ。

「今から、私に他の女性を探せとおっしゃっていますか?」

あー……まぁ、それは無謀だよね。

ほとんどの人はすでにホールに集まっているはず。

さすがに今からパートナーを探すなんて、無理難題過ぎるって話ですよねー。

「大丈夫です。ブルードレスがとても似合っていて綺麗ですよ。耳飾りやネックレスもサファイアにしてくださったんですね」

嬉しそうに見つめられて、顔を赤らめながら視線を逸らす。

コバルトブルーのドレスにこだわったのは母上だ。

エスコートする異性に合わせて、どこか一色は相手の色を身に付けるのが、この国での習わし。

別におかしなことでもない。

王弟殿下の瞳の色は、深い海を思わせるような青だもんね。

ウォル殿下は、軍服に似た黒の礼服のポケットに赤いハンカチがさりげなく入ってるし、装飾の至るところについている石は、たぶんエメラルド。


でもこれって、親しい間柄限定の習わしなんだけど!

こんなド派手にアピールされて、こっちはめちゃめちゃ恥ずかしいやら腹立たしいやら。

そして、いざとなると、久しぶりの表舞台に尻込みしてしまう自分もいる。
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