PMに恋したら

「柴田さんが教えてくれたんです。だいぶ前ですけど」

7年前ですよ。なんて言ってもまた悩ませてしまうだけだろう。

「じゃあやっぱり、実弥ちゃんは高校の時駅のトラブルで通報した高校生だ」

目を見開いた。

「6年前、いや、俺が初めて就いた交番だから7年前だったね」

「思い出してくれたんですか?」

「俺のことをシバケンって呼ぶ女の子は数えるほどしかいないからね」

シバケンは「懐かしいね」と言って微笑んだ。7年前と何も変わらない優しい顔だった。嬉しくて目が潤んできた。

「嬉しいです……思い出してくれて……」

「正直言うと、気づいたのは昨日なんだ。実弥ちゃんが咄嗟にシバケンって呼んだとき」

昨夜酔った男性がシバケンに向かって飛んだ瞬間、思わず名前を叫んだ。あれで思い出したのだ。

「駅のホームで不安な顔をしてた高校生だった君の顔まで思い出したよ」

この言葉に顔が赤くなった。あのときの私は恐怖できっと酷い顔をしていたに違いない。

「またまたー……顔はさすがに忘れてますよね?」

空気を読んで顔を思い出したと言ってくれたのかと思った。

「ううん、顔も思い出したよ。交番に友達と結構来てくれてたでしょ。ごめんね、すぐには気づかなくて」

「いいんです。思い出してくださっただけで十分です」

複数いた女子高校生の中の一人ではなくなった。記憶の中から私のことを思い出してくれた。

「あの時から何も変わってない、かっこいいシバケンがまた見れて嬉しい……」

思わず言ってしまった言葉にハッと口を押さえた。いくらなんでも本音を言い過ぎた。今日は何度シバケンをかっこいいと言えば気が済むのだろう。これではまるで告白ではないか。
恐る恐るシバケンの顔を見ると、彼も私を見返した。驚くほど真剣な顔をして。

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