棘を包む優しい君に
6.夢と現実
 穏やかな木漏れ日の中にいるような気持ちになって、夢の中なのだと理解した。

 綿毛のようなふわふわとした優しさが唇に舞い降りる。

 あぁこれは夢なんだ。都合のいい夢。
 望んだ姿になった俺は優しいぬくもりに手を伸ばした。

 手を伸ばした先には微笑んでいる柔らかな愛おしさがあって腕の中に抱き寄せる。
 目が覚めてこのぬくもりが消えないようにもう一度だけ夢の中へ堕ちていった。

 悲しい寂しさに溺れるのはもうたくさんだ。
 いい夢を見て人間を終われるのなら幸せってもんだろう。

 もしも神様がいるのならありがとうって言いたい。




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