棘を包む優しい君に
8.知られたくなかった
「動物:犬。ですか。」

 背後からの声にビクッとして、ノートパソコンの画面を閉じた。
 閉じたところで今さら遅いのだけれど。

 もちろん声の主は朱莉。
 いつの間にか起きていたようだった。

「閉じちゃって大丈夫ですか?
 保存しました??」

 動物:犬。よりも保存の方が気になる朱莉に少しだけ冷静さを取り戻した。

「大丈夫だ。
 閉じても落ちるわけじゃない。
 スリープモードになるだけだ。」

「そっか。なら良かったです。
 さっきのは動物占いですか?」

 動物………占い………。
 仕事関係の資料に占い結果を載せるわけがない。
 一度じっくり頭の構造を調べてみたくなる思考回路だ。

 しかし安堵する。
 変わった奴で良かった。
 ただの馬鹿なだけって方が有力だが。

「健吾さんならハリネズミですね。」

「どうしてそうなるんだ。」

 突然の指摘にギクリとする。
 馬鹿な鈍感だとばっかり………。

「髪の色がそっくりです。
 さっきもハリーくんにそっくり!って思わず触りたくなってしまって……。
 すみませんでした。」

「ハリネズミと一緒にするな。」

 自分で言って無様だった。
 自分はそのハリネズミなのだから。





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