契約の彼女と彼の事情

11話

「大丈夫?」

隣で話を聞いていた修一郎さんが、心配そうに顔を眺めてくる。

「大丈夫ですよ」

伊達に長年下っ端OLをしていない、
上司や女性の先輩の話を、笑顔で聞く技術が、ここでも役立った。

「むしろ、もっと嫌味を言われるかと思ってたのですが」

「そうなの?」

修一郎さんが、驚いた顔で見つめてくる。

「この家と修一郎さんを、本当に大切にしているんだと思いました」

「それに」

と思わず吹き出す、

「子供の頃の修一郎さんの話を聞けたのは、嬉しかったですからね」

それは・・・と、修一郎さんはおろおろしている。

そうしていると、

「修一郎」

とおばあ様が修一郎さんを呼んだ。

行ってくると、席を外した修一郎さんが、
おばあ様と言い争っている声が聞こえる。

やはり、平凡な家の娘なんて気に入られなかったんだろうか、
背中に冷たい物が走った。
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