契約の彼女と彼の事情

34話

後で知ったのだが、周防家は、私が思っていたより、
ずっと凄い家だったようだ。

それは結婚式の準備の時に思った。

結婚式も、単に友人や仕事関係の人だけでなく、
名士と呼ばれる人も招く。

修一郎さんの仕事は手伝えないが、
おばあ様について、家の事を学ぶよう、心がけている。

茶道も、おばあ様に習うだけでなく、
免状を取る為、茶道教室に通い始めた。



「舞」

修一郎さんが私を呼ぶ。

「届いたよ」

部屋には白無垢と披露宴で着る色打掛が並べられている。
鬘の文金高島田(ぶんきんたかしまだ)と角隠し
も一緒に用意されてた。

「綺麗」

思わず見とれる。

色打掛は白い生地に、徐々に赤の色が入り、
大きな牡丹の模様がいくつも描かれている。

「これを着た、舞、綺麗だろうな」

すでに入籍はしてるものの、結婚の実感がわいてくる。

「私ね、新しい夢ができちゃった」

「何?」

「修一郎さんと、家族と皆で、幸せになる夢」

「なら、その夢、協力するよ」

「修一郎さんなら、そう言ってくれると思った」

どちらともなく、手を組み、微笑み合った。
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