【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
確認すると、12時からフレンチレストランに予約が入っていることが分かり、麻耶はホッと息を吐くとその人の所に戻り声を掛けた。

「大変お待たせいたしました。フレンチレストランでご予約を頂戴していました。ご案内いたします」

「おお、悪いね。ありがとう」
「とんでもありません」
麻耶はゆっくりと、館内を歩き始めた。
「お連れ様もいらっしゃてるそうです」
「おお、家内の方が早かったか。娘も一緒だからわかるのだろうな」
その言葉に、麻耶は笑顔で男性を見た。

「お嬢様もご一緒なんですね。楽しんで頂けると嬉しいです」
「ありがとう。それにしても綺麗な場所じゃな」
外のチャペルや緑の木々を見ながら、その男性は足を止めた。
「ありがとうございます。弊社社長、スタッフがこだわって作った場所になります。レストランから見える景色も気に入って頂けるといいのですが」
「ほお、社長さんが……。まだ若いと新聞で読んだことがあるな」
思い出すように言ったその男性は、また歩き出した。

「はい。皆様が幸せになれる場所を提供したいという思いで、この場所を作ったと私も聞いています」
麻耶も、木々が揺れるその場所を見ながら感慨深く言った。

「お嬢さんもこの場所か好きかの?」
「はい、とても好きです」
フフッと笑った麻耶に、その男性は目を細めて麻耶を見た。
「おお、いたいた。おい!」
すぐ先に、和服を着た女性と、ベージュのワンピースを着た上品な女性が立っていた。

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