【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
ダイニングテーブルに食事を並べて、ワインを出すと二人は食事を始めた。

「そういえばお兄さんって結婚式は?相手の方ってどんなかたですか?」
麻耶は食事の手を止めると、思い出したように芳也に尋ねた。
「お披露目パーティーは会社がらみでホテルでやるけど、友人や親しい人を集めてカジュアルなパーティーはしたいみたい。相手の人は兄貴の秘書だよ」
「そうなんですね……やっぱり、ミヤタ自動車の副社長ともなると大変ですよね」
「まあ、籍を入れて終わりって訳にはいかないだろうな。兄貴は次期社長がほぼ決定だろうし」
「次期社長……。すごい」
「そう言われて育ってきたからな」
少し寂しそうに笑った芳也をジッと麻耶は見た。

「お金持ちのお家って、小さい頃は羨ましかったですけど、実際大変なんですね。秘書の方もお嬢様ですか?」
「いや、兄貴が一目ぼれしたらしい。それもうちの式に来ていたあの日に」
「え?あの日?」
意味ありげに言った芳也に、麻耶も驚いて目を丸くした。

「そう。俺が麻耶に迫られた日」
ニヤリと笑った芳也を、麻耶は軽く睨んだ。
「そう言う言い方しないでください。もう迫まりません」
拗ねたように言った麻耶に、慌てて芳也は、
「ウソ!また迫って。麻耶ごめん!」
そんな芳也を見て麻耶はクスクスと笑った。

「でも、あの日にお兄さんは、運命の相手に出会えたなんてなんかすごい偶然」
感慨深く言った麻耶に、芳也も頷いた。
「兄貴が幸せになってくれて本当によかったよ」
ホッとした表情を見せた芳也に麻耶も安堵した。

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