芳也は腕の中で眠る麻耶をそっとソファに寝かすと、寝室からブランケットを持ってきて麻耶にかけた。

(俺は何してるんだか……それにしてもこうしてると随分幼く見えるな)

ノーメイクであろう麻耶の寝顔を見て、そんな事を思いながらウィスキーを一口飲むと、また洋画の続きに目を向けた。

(こいつがこの映画を知ってるなんてな)

横ですやすや眠る麻耶を見てフッと微笑んだ自分に気づいた。

(久しぶりにこんなに近くに人がいるな……世話の焼ける従業員だよ)

ずっとここ何年も人を寄せ付けず、仕事に没頭してきた。
今回も、アイリがここに押しかけてくるのが解っていたので、その煩わしさから逃れる為だけに、麻耶を家に置くことに決めた。
チラっと麻耶を見て、芳也は「ただそれだけだ……」呟くように言葉にすると決意を新たにした。

(でも、本当にころころと表情の変わる女だな……)

そこで、無意識に麻耶の頭を撫でていた自分に気づき、ハッとして手を離した。
手が離された麻耶が眠りながらも、一瞬不安げに表情を曇らせたのを見て、芳也はまた麻耶の頭に触れた。
安心したように、眠りについた麻耶を見て、芳也は大きくため息をついてウィスキーをすべて流し込むと、何も食べ物の入ってない胃が少し痛んだ。

(すきっ腹にウィスキーのストレートはまずかったか……)

グラスを置くと目を閉じて痛みが治まるのを待っていた。