【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
(我ながら美味しそうにできたぞ)

おいしそうな匂いのカレーを満足げに見ていると、上下スエットに着替えた芳也がゆっくりとリビングに入って来た。

「水崎」
「はい?」
クルクルとお玉でカレーをかき回しながら麻耶は芳也を見上げた。
「今日は、悪かったな」
「え?」
急になぜ謝られたのかわからず、ポカンとして麻耶は芳也に聞き返した。
「昼間の言葉」
そのセリフに麻耶はようやく芳也の謝罪の意味を悟り、曖昧に微笑んだ。

「私こそすみません、ちょうどなんとなくこんな時にドレスか……って思いながら歩いていたところだったので。ついしんみりしちゃって」
「そうか」
特に何も言わずに芳也はダイニングテーブルに座ろうとして、動きを止めた。

「少し飲むか?」
少し悩んで麻耶は、「少しだけ」そう答えると、お皿にご飯とカレーを盛りつけた。
「まあ、お前少しだけしか飲めないもんな……」
少し悩んだように呟いた後、自分のグラスにビールを注ぎ、麻耶にはまたシャンディガフを作るとテーブルに置いた。
「それ、こないだ美味しかったです」
麻耶もテーブルに皿を並べながら、キラキラとひかるグラスを眺めた。
「そうか。まあ、ほとんどジンジャーエールだけどな。少しだけ酒の気分も味わえるだろ?」
クスクス笑いながら言った芳也を麻耶はじっと見た後、芳也の前の席に座ると、

「社長、ありがとうございます」
いきなりぺこりと頭を下げられて、芳也は驚いて麻耶を見た。
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