政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「あ、そうだ。婚約指輪(エンゲージリング)、ありがとうございます」

わたしがぺこりと頭を下げてお礼を言うと、将吾さんの片眉が上がった。

「……『ございます』?」

「エンゲージリング……ありがとう」

すぐさま言い直す。めんどくさい人だ。

「ふーん、気に入ったのがあったらしいな」

わたしは大きく肯いた。
買ってもらったリングのデザインを思い出したら、思わず頬が緩む。

「……おい、彩乃」

なぜか、また将吾さんのご機嫌が斜め向きだ。

「その顔、茂樹に見せるなよ」

……茂樹?

「島村だ」

将吾さんはわたしが手にしていたライトブルーのドット柄のネクタイをするっ、と取った。

「時々、ぼんやりと見てるよな?」

ちょっと拗ねた声のように思えたので、彼の顔を覗き込んだら、ふいっと逸らされてしまった。

「そろそろ、島村が出社する時間になる……先に出ろ」

もう「副社長」の声だった。

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