いつか、らせん階段で
いつか、らせん階段で


再び付き合い始めた私たちだけど、私は少し不機嫌だ。


まず、尚也は私と再会してすぐに私と暮らすためのマンションを購入していた。(私の意見も聞かず)
私は尚也のことを拒絶していた時期にだ。
私がもう結婚しているとか彼がいるとか思わなかったのかと聞いたら、「誰がいても絶対奪い返すつもりだった」と恐ろしい発言をした。


尚也の実家の御両親にお付き合いの報告に行ったところ、私の予想に反して御両親は私のことを優しく受け入れてくれた。
というより「やっとか」という反応だった。
私のことは3年前に尚也から既に聞いていて、お父さんに至っては紹介されるまで我慢できず、秘密裏に私のことを私が勤める病院に見に来ていたらしいのだ。
「あの時、籍だけでも入れてから留学すればよかったのに」というお父さんの発言にピクリとした。
高原の夜に聞いた電話の主とその内容、あれば尚也とお父さんが私のことを話していたのかっ。
紛らわしいわっ!

まだある。

「なつはぁー、3年前に作った婚約指輪ってまだ有効かなぁ?」と堂々と聞いてくる尚也のその無神経さに腹が立つ。
聞けば私へ自分のデザインした指輪を贈りたかったらしく、自分の幼馴染がやっているジュエリーショップに通ってイチからデザインをしていたらしい。それで遅くなり実家に泊まり度々帰宅しなかったわけだ。
私はあの見合い相手のところに行っているんじゃないかと心配して心を痛めていたというのに。


あまりにいろいろと腹が立ったから私は尚也にプロポーズの返事をしていない。
返事を求められると、
「もう少し考えさせて」
と逃げることにしている。

もちろん、尚也以外と結婚するつもりはないし、尚也のことは好きだ。
でも、これでいいのか?
尚也の留学前から今までの3年半近くの私の葛藤と苦しみ、全て『勘違いでしたー、テヘペロ』みたいな流れでなかったことにしていいのか?

何だかとっても納得できないのだ。
全然納得できないのだ。

そういうわけで不機嫌な私は尚也の住むあのマンションにはあれからほとんど行っていない。

まあ、尚也と会わないという選択肢はないから尚也が私の部屋に住み着いているような感じなんだけど。


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