御曹司と婚前同居、はじめます
第3話 * 野獣の甘い罠



部屋が薄暗くなってきたと感じて窓外を見やると、いつの間にか濁った色の雲が一面に広がっていた。
 
夕暮れにしては早いと思ったけど、天気が崩れてきたせいだったらしい。

陽射しがなくなった途端心もとない気分にさせられる。

部屋の明かりをつけて、まだ何の連絡も入らない携帯電話を握り締める。

どうしよう。連絡してみようかな?

お腹も空いてきたし、もしこのまま夜遅くまで帰ってこないのなら、雨が降り出す前に自分の分だけでもご飯を用意しておきたい。

どうしたものかと広いリビングを行ったり来たりしていると、手の中で携帯電話が震えた。

見ると、メッセージアプリに登録した覚えのない瑛真の名前が表示されている。


『十八時には帰る』


いつの間に私の番号が登録されて、友人に追加されたのかはこの際置いておこう。


『了解しました』


すぐに返信してからひと息ついた。

良かった。

カードキーを手渡されたけれど、エレベーターの乗り降りすらも一人でするのには不安がついてまわる。

瑛真が帰ってきたらいろいろ教えてもらわなくちゃ。
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