「…ただ、一個謝らなきゃいけないことがある」

少し間をおいて、深刻そうに呟く声。

「…なんですか?」

永瀬さんは運転したまま口元を手で覆った。

「この前、薬を飲ませるとき…」

「ああ。大丈夫。知ってます」

拍子抜けしたように丸い目をしてちらっと私を見て、また前を向き直った。

「…正直ですね。私、意識が朦朧としてたんだし、黙ってればバレないのに」

クスクス笑ったら、口をへの字に曲げて、また首の後ろをポリポリ掻いた。


車がアパートの前に着いたとき、外はもう真っ暗だった。

ネオンが輝き、見慣れた風景が広がっていく。

車をアパートの前につけてくれて、私は頭を下げてお礼を言った。

「ありがとうございました」

「いや、こっちこそ急に付き合わせて悪かったな」

なんだか離れがたいな。

一日一緒にいたから…

「じゃあな」

「…あのっ」

考える間もなく声が出ていた。


バカみたいだよね。

昼間泣いたくせに。

だけど、やっぱりそれを救ってくれたのは永瀬さんの温もりで…

永瀬さんのやさしさが、今日はたくさん感じられて…

嬉しかったよ。

もっと一緒にいたいって、そう思ったよ。

「…またっ誘ってくれますか?」

永瀬さんは目を見開いたあと、嬉しそうに笑って、ああ、と言った。

初めてみたその子供みたいな笑顔に、また胸が騒いだ。



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