意地悪上司は私に夢中!?
探偵ごっこのようで気が引ける。

いや、探偵どころかストーカーと言われてもおかしくない怪しい女だ。

少し出遅れてしまった私は、会社を出てキョロキョロと辺りを見回した。

早速見失ってしまったかと思いきや、永瀬さんはオフィスビルの角の壁に寄りかかり、スマホをいじっていた。


こういう時、長身のイケメンは見つけやすい。

放つオーラが違うから、通りゆく女性の視線を集めまくっている。

あの顔に見慣れてしまった私は妙に感心しながらその様子を見守った。


すると、永瀬さんが誰かの声に反応して急に顔を上げた。

ピンクベージュのワンピースを着たロングヘアの女の人が、手を振りながら永瀬さんに近づいてくる。

スタイルが良く、目鼻立ちの整った綺麗な女性。

彼女は永瀬さんに腕を絡め、あろうことか私のいる方向へ歩いてきた。

マズイ。

咄嗟にビルとビルの細い隙間に隠れ、2人が通り過ぎるのを待った。


「お酒まだ部屋にあったわよね?」

「毎日飲み過ぎだぞ、蒲田さん」

オーラを放つ美男美女が通り過ぎる瞬間に聞こえた声。

それは間違いなく永瀬さんのものだった。

ゆっくりとビルの間から出てきたら、後ろから来た人が

「うわっ!」

と驚いて、怪訝な顔をしてじろっと見ながら通り過ぎていく。

2人の背中が遠ざかっていくのを、私はただ立ち尽くして見ていた。

一緒に永瀬さんの家に行くんだ。

オフィスの裏に停めてある永瀬さんの愛車で。

腕を絡めていた時点で決定的だったのに、家に行くなんて、もう完全に恋人同士だ。


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