何度でも恋に落ちる

２・現在地

翌朝。

真弓からのメールで目を覚ました千夏。



千夏が起き上がると、そこはベッドの上だった。

翼の姿はない。




千夏がリビングに向かうと、翼はソファの上で眠っていた。



背の高い翼が体を伸ばして寝るには小さいソファ。


翼は頭と足がソファから落ちていて、寝にくそうな体勢をしている。




「…ベッドで寝ればいいのに気を使ってくれたんだね。ありがとう、翼」



千夏は翼の黒い髪をフワッと撫でると、翼の顔を見つめた。



長い睫毛に、シャープな輪郭。

凛々しい顔立ちなのに可愛い性格をしている翼。




千夏が恋に落ちるのに余計な時間など必要なかった。



「…ん。」



千夏に髪をサワサワ触られている翼は、くすぐったそうに眉を寄せると薄く目を開けた。


千夏は慌てて髪を撫でていた手を隠す。




「…ちー？…もう起きたの？」


「う…うん。おはよう。ごめんね、１人でベッド使っちゃって。寝づらかったでしょ？」


「大丈夫だよ。昨日知り合ったばかりの女の子と同じベッドで寝るワケにもいかないし。ちーがよく眠れたなら、それでいい」



翼は体を起こすと、腰を曲げてパキパキと鳴らし始めた。



カーテンから射し込む朝日に照らされながら２人が微笑み合っていると、ドアを叩く音が聞こえた。
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