王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~

春。
貴族にとって、この季節は大事な社交のシーズン。


けれど私、ビアンカ・ウィスト・キャロラインの目当ては、そこにある豪華な料理だけ。

周りにはたくさんの、煌びやかなジュストコールに身を包んだ男たちがいて、ダンスに気の利いた会話に、同じく華やかなドレスに身を纏った女たちは心躍らせていたけれど、そんなものよりも私は、美味しいものをたらふく食べることの方が重要だったの。

別に、私の家が貧乏なわけじゃない。
むしろ裕福なほうだと思う。

だけどそれは今現在のことで、父が小さい頃はその日の食べ物もないくらい、困窮していたらしい。

その危機を、私の父が寝る間も惜しむくらい必死に働いて、一代で財を成した。

国王はそんな父の功績を称えて、男爵位を与え、今に至る。


昔の生活のことがあったのだろう、父はとてもお金にはとても厳しかった。

周りからはケチだと思われるくらい、家にお金はあっても暮らしは質素なもの。


なにかあってもひとりで生きていけるようにと、使用人は最低限の人数しか雇わず、自分の着替えから部屋の掃除まで、全部自分でするように言われていた。


人前で着るドレスだけはお金をかけてくれたけれど、屋敷で着るものは安い既製品。しかもほつれた部分は自分で直して、破れて直せなくなるまでは着るのが決まり。

さすがに食事は料理人がいて作ってくれてはいたけど、食べ残しがないようにと、出てくる料理も変わり映えのない、最低限のものだった。


だからこの社交場は、私にとってとても大切な煌びやかな食事を堪能できる大切な時間。

お皿から溢れんばかりの瑞々しい野菜、テカテカと照る丸ごとの肉、果汁溢れんばかりの果物、宝石のようなケーキ……。

会場の別室に設置されたそれらに、参加者はほとんど手も付けない。

みんな意中の相手を見つけることに必死だから。


けれど、私は男よりも料理。
それに美味しいワインを添えて。


壁ごしに聞こえるゆったりとした音楽を聴きながら、私は今日もひとり、目の前の豪華な料理を楽しんでいた。

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