不器用王子の甘い誘惑
3.命とイケメン
 松田さんは爽やかイケメンの上に心優しかった。
 向かうところ敵なしだよ。

 結局、最後まで付き合ってもらって、休憩室でコーヒーまで奢ってくれた。
 私が奢るべきなんじゃ……と思うのに、残業ついでに仕事を教えてもらえたからとパーフェクト回答までしてくれる。

「この後、良かったら食事でもどうかな?
 って、俺、敬語じゃなくて良かった?
 入社的には後輩でしょ?」

「構いません。
 私は25歳ですけど、松田さんは?」

「俺は28。
 天野さん若く見えるから絶対に俺より下って思っちゃって。」

「松田さんは貫禄ありますね。」

「どういう意味?お腹出てた?」

 ふふっ。そんなわけない。

 スーツがとてもよく似合っていて、スマートで、先輩方がキャーキャー言うのも納得できる。

「で、食事はどう?」

「あ、いえ。
 松田さんと一緒に食事なんて行ったら命がいくらあっても………。」

「え?何?」

 この人、自分がイケメンの自覚ないのかなぁ。
 そんなわけないよね。
 イケメンじゃなきゃさらっとご飯誘ったりできないよね。

「急いで帰らないといけないので。
 手伝っていただいてありがとうございました。
 また今度、何か奢らせてくださいね。」

 今度なんてきっと来ないんだけど。
 礼儀より命が惜しい。
 残業だって一緒にしてたの先輩方に見つかったらたまんないよ。





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