階下から、ちょっと遠慮がちに私を呼ぶ声がする。


「美奈―……? お前……またご飯食べなかったのかい?」


日曜日の夕方。


夕食の準備をしようとして、キッチンに私の分の昼食が手付かずで残っているのを見つけたんだろう。
祖母が、返事を待つように、少し間を置くのがわかる。


「昨日からずっと、なにも食べてないんでしょ? ちゃんと食べないと身体に悪いよ」


私が返事をしなかったからか、祖母が更にそう続けるのを、私はベッドで布団に包まったまま聞いていた。


金曜日の夜、家に帰ってきてから、私はずっと部屋に閉じこもって過ごしていた。
階下に降りるのはトイレに行く時だけ。
祖母と顔を合わせることもないまま、この週末が終わってしまった。


ずっと機嫌が悪かった祖母は、最初は私が部屋から出てこなくても気にしなかった。
だけど、食事はちゃんと用意してくれていたんだろう。
次の食事を作ろうとする度に、前の物が手付かずなのに気付いたようで、私が昨日からなにも食べていないことも知っていた。


心配してくれたんだろう。
今朝から、今のように声をかけてくれるようになった。


だけど、足腰に痛みを抱える祖母は階段が昇れず、二階の私の部屋までは来れない。
だから、私が下に降りていかなければ、そのうち諦めて部屋に戻っていく。
今も、二言目の後は、なにも聞こえてこなかった。