翌朝。
私は廊下を猛ダッシュして医局に駆け込んだ。


「おはようございますっ!!」


ほとんど怒鳴るような挨拶をしながら、すぐに真っすぐ医局の奥の簡易休憩スペースに視線を走らせた。


ウチの医局に所属するドクターは、心臓医療技術発展の為に研究する『研究医』と、臨床現場で治療に携わる『臨床医』、大きく二つに分けられる。
木山先生はその前者の研究医で、病院で患者さんの診察やオペをするよりも、大学で学生の講義をしたり研究論文を執筆する方が多い。


月曜日以外は直接病院に出勤する医局員が大半だけど、木山先生はだいたいいつも朝から医局にいる。
そして今日も思った通り、医局の奥の古いソファにふんぞり返るように腰を下ろし、悠々と新聞を広げていた。
一度立ち寄った様子の何人かの研修医に挨拶されて、割と丁寧に返事をしている。


「あ、美奈ちゃん……」


秘書のデスクに着いてパソコンを操作していた雫さんが、目の前を通り過ぎる私に気付いて、「おはよう」と声をかけてくれるけれど、今私の目には木山先生しか映らない。
いつもの二倍は広い歩幅で医局を横切り、私は研修医を掻き分けるようにして木山先生の前に立ちはだかった。