それはともかく――。
私は、一色先生のあの温かい笑顔に、完全に魅せられてしまったようだ。
あれからというもの、彼への興味は募る一方で、私は平日五日間、学内でも学食でも病院でも、行く先々でその姿を探した。


けれど、やっぱり別々の医局ではなかなか接点がない。
私は半分追い詰められた気分で、一色先生の大学での講義スケジュールを調べてみた。


もちろん、医学生じゃない私が、講義に潜ることもできないし、そもそもその時間は私もお仕事がある。
だけど、週に二回だけ、確実に姿を拝めるタイミングがあることに気付いた。


それは、毎週水曜と金曜日。
午後一の講義が始まる、昼休み明け一時半。
場所は医学部棟二階の大講義室付近。
その時間、そこに私が行ければ、講義に入る前の一色先生を、眺めるチャンスがあるのだ。


普段私のお昼休憩は早番型の十一時半から十二時半の一時間。
だけど、遅番型の十二時半から一時半にずらせば、医局を抜けられる。
一色先生が講義開始時間より早く講義室に来てくれれば、週に二度は見かけることができるのだ。


だから私は、水曜と金曜だけ、お昼休憩の時間を一時間ずらし、一色先生見たさに大講義室に足を運んだ。
でも一色先生が少し時間に遅れれば、それでアウト。
しかも、そこまでしても、得られる成果は遠目に眺めることだけ――。