淫雨
淫雨
「……三崎さん。何度言えばわかるんですか。わたしに気安く接するのはやめてください。わたしたちはもう他人同士です」

「でも俺たちは変わらず家族だって言ってくれたの雨里ちゃんじゃない」

「それは……病気の姉の前だったから……だから」


だから?


虹花は亡くなる数日前、わたしに言った。


『アメリちゃん』

『ん、なに?』

『わたしが死んじゃったら一馬さんをよろしくね』

『ちょっと縁起でもない。 やめて』


彼女は微笑んで、もういいの、と。


何がいいの。


『あの人は……一馬さんは、まだ忘れられないんだって笑うフリして、でもありがとうって泣いちゃうようなひとだから』


一馬さんもきっとアメリちゃんのことが好きだから。


『あの人はわたしと虹花が同じ顔してるけどガサツとおしとやかで違うのが面白いだけでしょ……』

『好きにも色々あるんだよアメリちゃん』


なんて、姉だけど、同い年なのに全てをわかってるみたいな口振りの虹花にドキッとした。


やっぱり敵わない。





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