Re:ヴェーク 《起》

「この発明は人類が柔軟に変化することが出来たからこそ、なしえたのです。」




_和田信礼(Wada Shinre)さんの書籍
《人類の進化論》の冒頭の1節です。
和田さんらしい謙遜と名言のこもった一節ですね。
皆さんもご存知の通り、和田さんはロボットの制御システムを開発し、世の中に大きく貢献しました。
しかも、この書籍、なんと発売からたった1か月で100万部も売り上げたそうです!
今では、その天才的頭脳から親しみを込めて
『現代のチャールズ・ダーウィン』
と呼ばれるようになりました。
更に、明日都内で記者会見を開くそうです。
目が離せませんね。
いったいどんなことを語ってくれるのでしょうか。
明日が楽しみです!

以上、朝のニュースをお伝えしました。





_朝の8時。
画面の中のニュースキャスターがお辞儀をすると、すぐさま別のニュース番組に切り替わる。
朝っぱらからテレビの中までもが忙しない。
テーブルの上にあった朝食に全く手をつけて無かった事を思い出した時にはもう遅く、遅刻ギリギリだった。
皿の上の朝食を口いっぱいに掻き込み、乱れた服を押さえながらカバンを片手に家を飛び出す。
皿はそのままだ。どうせロボットが片付ける。
家に帰れば、風呂が湧き、床が磨かれ、晩御飯が用意されている。
全てロボットがやってくれる。
ひとり暮らしの自分にはとても助かる。
これも和田信礼が制御システムとやらを開発してくれたお陰だ。
ちょっと前まではロボットが地球を侵略するだのなんだの騒がれていたが、ニュースでも取り上げられていた和田が天才的頭脳でパパっと制御装置を作り、今ではロボットの侵略なんて夢物語だ。



学校は家から数百メートル先にある為、遅刻でも走ればなんとか間に合う。
通勤ラッシュでごった返す道を全速力で駆け抜ける。
朝食を食べた直後で横腹が痛い。
6月の生温い風を頬に受けながら走り続けた。
やっとの思いで校門の前にある坂道にたどり着くと、そこはまだ通学中の学生達で賑わっていた。
両膝に手をついて、背中で大きく呼吸をしながら荒れた息を整える。
どうやら遅刻は免れたらしい。
まだ少し《五月蝿い呼吸》を聞きながら校門をくぐった。
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